金融商品取引法

業規制と歴史

金融商品取引法の三本柱として、金融商品取引業者等に対する業規制があります。

開示規制が企業の実態を映す鏡であるなら、業規制は歴史を映す鏡ともいえます。

そもそも業規制が初め登録制からはじまり、昭和30年代の不況から昭和40年の旧証券取引法改正により免許制に移行し、その後、平成に入ってい規制緩和の進展から、平成10年の改正で再度登録制に移行しています。

平成10年後も平成15年の仲介業者など時代のニーズに沿って業規制の見直しが行われてきています。

そして、なんといっても業規制を根本的に見直したのが、平成18年の金融商品取引法に係る改正です。

同改正により、規制の横断化と柔軟化が図られ、横断的な金融商品取引業による規制や特定投資家制度による柔軟な規制が行われることになりました。

これも、さまざまな金融商品の浸透とそれに応じたさまざま投資家の出現という現代的な課題に対応するものといえます。

このように、業規制はその時代の社会状況に応じて変化していく宿命にあります。

最近でも、サブプライムローン問題に端を受けて、格付会社を規制しようとするニーズが高まっています。そして、このための法改正を行うことを政府が検討しているとのことです。

このように無味乾燥といえる業規制も歴史という観点からみれば、面白いものに見えてくると思います。

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トヨタショック

自動車メーカーの業績が悪化しています。ここ数日のニュースによると、

①トヨタ→76.3%の営業利益の減益

②GM→42億ドルの赤字

③フォード→1億2900万ドルの赤字

等々です。

これに加えて、各業界の再編が進んでいます。

①三菱UFJのモルスタに対する資本提携

②野村證券のリーマン従業員の引き抜き

③パナソニックの三洋電機の子会社化

④りそな銀行とりそな信託銀行の合併

他方で、M&Aの件数の減少も報道されたところです。

今後のM&A市場の見通しとしては、アクティブな事業拡大型のM&Aは減少するでしょうが、救済合併的なM&Aの件数は増えるものと予測されます。また、日本の株価の低さから、アジア系のSWFやファンドによるM&Aが増加する可能性があります。また、国内市場に閉塞感のある企業による、円高を利用した海外M&Aも件数としては多くはないでしょうか、生じてくるものと思われます。

企業価値研究会が今年議論していた買収防衛策の議論などは、かすんでしまいそうな状況になっています。なりふりかまわないM&Aが、これから続くことになりそうです。

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有価証券届出書と有価証券報告書

 先日、企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され、新規公開用の有価証券届出書(2号の4様式)に四半期財務諸表の記載が求められることとなりました。

 2号の4様式を提出する会社は、まだ上場されているわけではないので、未だ半期報告書を提出する会社です。にも関わらず、今回の改正によって四半期財務諸表を記載することが必要となったわけです。

 この改正により、四半期報告書提出会社=四半期財務諸表、半期報告書提出会社=中間財務諸表という図式に変更が生じることとなりました。

 有価証券届出書と有価証券報告書がリンクしていることが当然のことと思われている金商法において、今回の改正は意外と大きな改正なのかもしれません。

 もっとも、金商法の母法の国であるアメリカでは、そもそも有価証券届出書と有価証券報告書(正確にはこれらに相当するもの)は根拠法自体が異なります。

 すなわち、有価証券届出書は1933年法(証券法)が、有価証券報告書は1934年法(取引所法)が規定しており、有価証券届出書を提出せずに有価証券報告書を自主的に提出することも認められています。

 これに対して、日本の有価証券届出書と有価証券報告書は、後者の提出事由として前者が定められており、上場に際しても通常は有価証券届出書が提出されていることが通常であることから、外形基準以外の場合には、有価証券届出書と有価証券報告書との関係はかなり密接なものとなっております。

 ただ、有価証券届出書は勧誘に際して投資家に情報を提供しようとするものであり、他方、有価証券報告書は年次の情報を投資家に提供しようとするものです。

 したがって、開示内容についてまで、両者の対応を厳密に要求する必要は必ずしもありません。

 今回の改正が有価証券届出書と有価証券報告書との関係にどのような影響を及ぼすのか。興味深い問題です。

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内部者取引規制と開示規制

 内部者取引規制の必要性については、先日検討したとおりです。

 今日は、従来からあまり検討されていない内部者取引規制と開示規制との関係を考えてみます。

 内部者取引規制の重要事実と開示規制の臨時報告書の提出事由との間には、共通点があります。

 例えば、会社の合併や主要株主の異動は両者で共通しています。主要株主の異動については、両者で同じ概念を共有しています。

 そもそも、臨時報告書の意義は、明確に書かれた文献はないようなのですが、投資判断にとって重要な情報を適時に開示することにあります。

 他方、内部者取引規制においても、内部者取引の解除事由として、重要事実の公表が規定されています。

 これを前提に内部者取引規制を検討してみると、内部者取引規制は不公正取引の規制類型に入るとしても、開示規制類型の適時開示を促すという機能が存在しているものと考えられます。

 不公正取引規制と開示規制の融合としては、公開買付制度があることは以前検討したとおりです。

 このように考えれば、被害者なき取引といわれる内部者取引の規制の必要性はやはりあるといいうるのではないでしょうか。

 

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内部者取引(インサイダー)規制の必要性

三連休も終わりですね。妻が妊娠中なので、旅行とか遠出はできませんでしたが、ゆっくり休め、ゆっくり勉強できたので、充実した休みでした。

この休みを利用して、普段あまり使わない金商法の行為規制について勉強してみました。

金商法の構造は、大きく分けで、①開示規制、②業規制、③不公正取引の規制があるわけです(その他、取引機構に関する規制もあります。)。①~③は所管している課は異なるのですが、相互に密接な関係があり、一つの分野で使っている概念を他の分野の制度に組み込んでいたりします。

例えば、主要株主や特定投資家などがこの例です。

ただ、異なる課が担当しているためか、若干わかりにくい概念の使用をしている例もあります。例えば、①の特定有価証券と③の特定有価証券は文言は同じですが、別の概念です。

このような複雑さが金商法の難解さを生み出している一因ともいえるかもしれません。

さて、不公正取引の規制ですが、ライブドアなどで注目を浴びた風説の流布などがありますが、課徴金の事例の数からしても、実務的な重要性からしても内部者取引が一番重要なのではないかと思います。

内部者取引とは、いわゆるインサイダーのことをいい、最近では、公認会計士によるものや野村證券の社員によるものなどがあります。

内部者取引規制の必要性は、これを放置すると証券市場の公正性と健全性が損なわれ、ひいては一般投資家の証券市場に対する信頼が失われることに求められるとされています(松本真輔「最新インサイダー取引規制」9頁)。ただ、内部者取引は被害者のいない行為類型であり、また、市場の公正性や健全性を内部者取引が害するのかについても疑問が呈されています(川村正幸「金融商品取引法」468頁)。

この点について、根本的な解決になるのかはわかりませんが、インサイダー取引の規制の必要性を考えるうえで、行為者側の視点からだけでは、この必要性をうまく説明することはできないのではないかと思われます。

行為者側からすると、インサイダーは被害者がいない、市場の信頼を害するからといっても、内部者取引のある市場の付けた価格は一般に信頼されているのではないか、等々の指摘が可能でしょう。

しかし、不公正取引の規制は、行政規制なのですから、行政側の政策論的な視点を忘れてはならないのではないかと思われます。

すなわち、行為者側からの指摘はわかるものの、行政側からすると、内部者取引のある市場は健全ではなく、また、信頼性が低いと考えているのではないでしょうか。また、内部者取引が横行する市場が世界の投資家から魅力ある市場とはとらえられないという点も行政の政策として内部者取引を規制する理由となるのではないでしょうか。

その意味で、前掲松本9頁の「学問的には格別、少なくとも実務上は、インサイダー取引規制の規制根拠は、証券市場の公正性と健全性に対する一般投資家の信頼確保にあると理解しておけば足りる」との指摘は正鵠を得たものと評価してよいのかもしれません。

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意見表明報告書・対質問回答報告書3

 昨日は妻と美術館に行ってきました。私の趣味のひとつとして、美術館めぐりがあります。

 美術館めぐりのは飽きやすい私にしては続いており、大学生のころから続けています。

 絵の見方はそれぞれでしょう。美しいものを美しいものとして見る見方も一興。一人の画家を深く掘り下げてみるのも一興でしょう。

 私の絵の見方は推理に近いものです。絵をざっと見て、それから題名みて、さらに画家の人生、書かれた時期をみて、この絵で画家は何を伝えたかったのか。そんなことを想像しながら見るのが私流です。

 そのため、難解な絵であるほど面白い。というのが私の趣味で、妻は理解してくれませんが、ピカソとかが好きです。

 一定の限られた情報をもとに作者の意思を想像するというのは、法律学にも当てはまるものといえるでしょう。法律が芸術かは人それぞれの感じ方によるのかもしれません。

 さて、久々に意見表明報告書について検討してみましょう。

 対象会社が公開買付けに対して意見を表明することは、平成18年改正前には義務付けられていませんでした。

 もっとも、意見表明は敵対的、友好的の区別を問わず、広く行われていたそうです(清水「公開買付けの実務」251頁)。なぜなら、敵対的であれば、公開買付けに応じないように働きかけるインセンティブがあり、友好的であればなおさら、意見を表明するインセンティブが働くからです。

 この意見表明が平成18年改正によって義務付けられることになりました。これは、株主に対する十分な情報の提供の点から、意見表明を義務付けることが適当と考えられたからです。

 ただ、任意的になされていた意見表明を法令上の義務としたことについて、本当に良いことだけなのか、それとも義務化によって生じた問題があるのか、この点につい次回から考えてみようと思います。

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公開買付けと契約

暑いですね。あっという間に今年も7月。またビアガーデンの季節がやってきましたね。

私はビールが好きなので、飲み会に行くとビールばかり飲んでいます。

新作ビールがでるとそれもついつい試飲してしまいます。

結構面白いのは、日本人って苦い酒が苦手な傾向があり、ウイスキーとかを飲む人が減っていますが、なぜだか知らないけれど、ビールだけは辛口なんですね。バドワイザーと日本のビールを比べてみるとこの違いは明白です。

この違いは、やはりスーパードライと関係があるのでしょうか。

ちなみに私の好きな銘柄は、プレミアムモルツです。

さて話はまったくかわりますが、今回とりあげようと思うのは公開買付けと契約との関係です。

公開買付けも簡単にいえば株式の売買にすぎないのですから、株式を売買するという契約が背後にあるはずです。

しかし、公開買付けの建て付けを見ると、本当に契約が背後に存在しているのかが不明確な部分があります。

そもそも、契約は申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致によって成立します(民521条、526条)。

他方、公開買付けは、公告により株券等の買付け等の申込み又は売付け等の申込みの勧誘を行うものとされています。

公告が買付け等の申込みである場合には、株式の所有者が承諾の意思表示を行えばよいのですが、売付け等の申込みの勧誘の場合には、買付者の承諾の意思表示があるのかが問題です。

公開買付け期間の終了後に公開買付通知書が買付者から応募株主等に送付されますが、それをもって承諾の意思表示を擬制するという考え方もありうるのかもしれません。

しかし、公開買付けに応募したあとそれを撤回することを解除としている法の建て付けからすると契約は売付けの申込みの意思表示をもって成立しているとの考え方も成り立ちえます。

この点について、公開買付けにおいては契約法理を変容しているとする考え方(清水「公開買付けの実務」198頁)もあります。

ただ、公開買付制度は行政規制としての側面がつよく、私法に介入する意思を立法者が持っていたかは疑問の余地があります。

ここは、私法の法理から、承諾の意思を推定するとか、応募をまって効力を有する条件付の承諾に意思などを検討するほうがしっくりくるのではないかと思います。

詳解公開買付けの実務

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公開買付けの撤回

今日も公開買付けです。

公開買付けは、昭和46年の証券取引法の改正で導入されたもので、アメリカのウイリアムズ法をモデルとしたものでした。

いまでは、公開買付け制度は、株主・投資者が十分な情報の提供を公開買付者、対象者の双方から受け、熟慮のうえで株式を売るかどうかを判断できる枠組みとして機能していますが、当時は外資の買収に対する牽制を意図した制度だったそうです。

公開買付制度は情報開示だけではなく、公開買付者の行為を規制する側面を有します。

そのひとつとして、公開買付けの撤回の制限があります。

その趣旨は、公開買付者自身による撤回を自由に認めると、安易に公開買付けが行われ、対象株主等の立場を不安定にするとともに、株価操作につながりかねないからとされます(川村「金融商品取引法」183頁)。

ただ、まったく撤回が許されないとすると、不測の事態が生じた場合に公開買付者が過大なリスクを負うことになります。そこで、法令上、公開買付けの撤回事由が規定され、平成18年改正においても、買収防衛策に対する対応のため、撤回事由の拡大がなされています。

具体的な撤回事由は、

①発行者又はその子会社の業務又は財産に関する重要な変更その他の公開買付けの目的の達成に重大な支障となる場合、

②公開買付者に関し破産手続開始の決定その他の政令で定める重要な事情の変更が生じた場合、

です。①については、撤回事由を公開買付届出書で指定しておく必要があります。

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公開買付届出書1

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この前、「証券取引法」の注釈書が出ましたね。欲しいのですが、①金融商品取引法の注釈書ではなく「証券取引法」の注釈書であること、②値段が2万円を超えていて買ったのがばれると奥さんに怒られそうなことから、まだ購入していません。

買いですかね?

話は変わりますが、今回は公開買付けの話題です。

噂では、サブプライムの影響から、公開買付けの需要が減っており、M&A専門の弁護士さんはかなり暇なのだとか。

さて、現行の公開買付制度においては、公開買付けは公開買付開始公告によって始まります(27条の3第1項)。

公開買付公告において、公開買付けの目的、買付等の価格、買付予定の株券等の数、買付け等の期間その他内閣府令で定める事項を明示する必要があります。

この公開買付開始公告はEDINET上の電子公告などで行われています。

公開買付者は、公開買付開始公告を行った日に公開買付届出書及び添付書類を財務局に提出しなければなりません。公開買付届出書においても、買付等の価格、買付予定の株券等の数、買付等の期間が開示され、決済の方法、買付け等に付した条件、公開買付の目的、公開買付者に関する事項等が記載されることになります。

公開買付開始公告、公開買付届出書のいずれにおいても最も重要な情報は、買付け等の価格です。公開買付けに応じるのかについて株主にもっとも重要な判断材料になるからです。

また、公開買付けの目的も重要です。平成18年改正によって、公開買付けの目的の記載は充実されており、支配権取得または経営参加を目的とする場合は、支配権取得または経営参加の方法及び支配権取得後の経営方針又は経営参加後の計画について具体的に記載すること等が求められています。

この記載は微妙なところがあって、あまりにバラ色の未来を描きすぎると、将来自らを縛ることになるばかりか、株式を保有し続けることにインセンティブを与える可能性もあります。また、公開買付け価格においても影響を与えるでしょう。

そこで、政策投資目的や純投資という目的を記載し、公開買付け終了後、目的が変わるという方法も考えられなくはありませんが、虚偽記載罪のリスクがあるためお勧めできません。

このような微妙な記載事項をどのようにさばくのかが、法律家の腕の見せ所といえるでしょう。

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粉飾2

最近、「法定会計学VS粉飾決算」という本を読んでいます。某有名ブログでも取り上げられていますが、なかなか面白い本です。

著者はキャッツ事件という有名な粉飾事件の被告人です(裁判は未確定)。その経歴もさることながら、粉飾事件の当事者となった経験に基づくその意見は、説得力をもっています。

人は経験したことからしか何かを見出すことはできないことの証明なのかもしれません。

さて、粉飾です。

先日とりあげた粉飾と虚偽記載について、正確に述べていなかったので、今回はこの点について取り上げてみたいと思います。

前記の著作でも記述されていることですが、粉飾と虚偽記載は粉飾≦虚偽記載という関係にあります。

経理の状況に対する虚偽記載のことを俗に粉飾といっています(これも厳密な定義ではない)。

有価証券報告書を提出する経営者にとって売上や当期純利益を過大に見せることは、企業の株価や銀行からの借入に影響するばかりか、株主に対する説明責任にも関係のある事項です。そのため、経営者は当期純利益等の過大計上の誘惑に常にさらされています。

このように、当期純利益等を過大に見せることを粉飾といいます。

逆に、当期純利益等を過少に見せることを逆粉飾といいます。これは、非上場会社などで脱税目的のために行われたりします。

粉飾が重大な事項につき虚偽記載をしたとなれば、有価証券報告書等の提出者に刑事罰が科されることになります。

有価証券報告書等について虚偽の監査証明をした公認会計士には直接刑事罰が規定されているわけではありませんが、提出者と公認会計士が共謀して虚偽記載、虚偽証明をしたといえる場合には、公認会計士に虚偽記載罪の共犯が成立します。

また、有価証券報告書等の提出者には金商法上の課徴金が、また公認会計士には公認会計士法上の課徴金が課される可能性があります。

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粉飾

先週のドラマ「監査法人」を見ましたか。ハチワンダイバーとダブルブッキングだったので、どちらを見ようか迷ってしまいました。

監査法人を主役としたドラマで、もっともドラマチックになるのは、やはり企業の粉飾を発見する場合でしょう。

この粉飾がなぜ悪いのか、なぜ企業が潰れるのかについて、少し検討してみましょう。

まず、上場企業の場合には、有価証券報告書の虚偽記載罪が問題になります(197条)。粉飾が、この虚偽記載にあたる場合には、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科がなされます。

山陽特殊鋼事件、ライブドア事件、日興コーディアル事件など、著名な企業の粉飾が問題となったのは記憶に新しいところでしょう。(最近ではIHIもニュースになりました。)

その他、粉飾がなられた場合には、上場廃止がなされる可能性があります。ただ、この点について取引所の裁量があります。(日興コーディアルは虚偽記載をしましたが、上場廃止になっていません)。

その他、銀行取引の停止や社会的信用の失墜など、失うものは数え切れません。

しかし、このようなリスクにも関わらず粉飾は後を絶ちません。

今後の「監査法人」の展開が楽しみです。

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法律と自主規制

開示制度において、その規律をする方法として考えられるのは、法令による規制と自主規制とが考えられます。

法令による規制のメリットは、何といってもその正当性と安定性でしょう。

ただ、日本の法律を想起すれば分かるように、法令を改正するのは容易ではありません。また、法律の立案担当者が必ずしも実務に通じているわけでもありません。

他方、自主規制のメリットは取引所における自主規制を想起すれば分かるように、実務を反映できる点と柔軟性にあります。

ただ、自主規制のデメリットは、法令とは逆に、正当性と安定性にあるでしょう。また、エンフォースメントの点でも問題があります。

日本における開示規制は法令型を基本とします。それとは並行する形で取引所における適時開示が求められています。

他方、イギリスの公開買付規制などは、city code という自主規制が公開買付けを規制するルールとなっています。

どちらが優れているのかは一概にはいえませんが、国際対応という点を考えると、自主規制の方がその柔軟性から優れているのではないでしょうか。

実際に会計基準の世界では、ISBJという民間団体が会計基準の作成を一次的に行っています。

開示規制についても、先般の国会で成立した改正金融商品取引法で導入されるプロ向け市場においては、開示ルールの主要部分を取引所の自主規制にゆだねるそうです。

時代が進めば、日本において自主規制型の開示規制が採用される日がくるかもしれません。

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特別関係者と共同保有者

公開買付制度と大量保有報告制度は、開示規制のなかで、特殊な位置にあることは前から述べてきたとおりです。

公開買付制度の導入は昭和46年に遡りますが、平成2年の大量保有報告制度の導入にともなって、公開買付制度も改正がなされ、その基本的枠組みが整ったとされています。そのため、両者の関係は密接なものがあります。

ちなみに、公開買付制度の利用は平成2年の全面改正時までは数件しかなかったという事実は、いまとなっては隔世の感があります。

公開買付制度と大量保有報告制度のなかで、似て非なる概念として、「特別関係者」と「共同保有者」というものがあります。

特別関係者とは、①株券等の買付け等を行う者と、株式の所有関係、親族関係その他の政令で定める特別の関係にある者、及び②株券等の買付け等を行う者との間で、共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、若しくは当該株券等の発行者の株主としての議決権その他の権利を行使すること又は当該株券等の買付け等の後に相互に当該株券等を譲渡し、若しくは譲り受けることを合意している者を言います(27条の2第7項)。

①の政令で定める特別の関係にある者は、

個人である場合は、

(1)配偶者並びに1親等内の血族及び姻族。

(2)法人等に対して当該法人等の総株主等の議決権の百分の二十以上の議決権に係る株式又は出資を自己又は他人の名義をもつて所有する関係(特別資本関係)にある場合における当該法人等及びその役員。

法人である場合は、

(1)その者の役員

(2)その者が他の法人等に対して特別資本関係を有する場合における当該他の法人等及びその役員

(3)その者に対して特別資本関係を有する個人及び法人等並びに当該法人等の役員

他方、共同保有者とは、①株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における他の保有者をいいます(27条の23第5項)。そして、②株券等の保有者と当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者が、株式の所有関係、親族関係その他の政令で定める特別の関係にある場合においては、当該他の保有者を当該保有者に係る第四項の共同保有者とみなすものとされています(27条の23第6項)。

②の政令で定める関係は、

(1)夫婦の関係

(2)会社の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権に係る株式又は出資を自己又は他人の名義をもつて所有している者(以下この条において「支配株主等」という。)と当該会社(被支配会社)との関係

(3)被支配会社とその支配株主等の他の被支配会社との関係

(4)その他内閣府令で定める関係

このように、株式等の保有関係を見る上で、一定の関係のあるものを合算するという発想は特別関係者と共同保有者で共通しています。

また、規定の構造は異なるものの、形式基準と実質基準を規定する点でも共通しています。

ただ、特別関係者と共同保有者の範囲は、特別関係者の方が共同保有者よりも広い概念となっています。

これは、特別関係者が会社の支配権の移動が問題となる局面であるのに対し、共同保有者はこのような局面には限られないことが影響しているものと考えられます。

みなし共同保有者など、一定の関係にあれば共同保有者とみなし反論をみとめないことなどに対しては批判もあるところです。

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金融商品取引業1

風邪を引きました。最近、流行っているようなので皆様もお気をつけください。

これまでは金融商品取引法については、主に開示規制について検討してきました。

今回は少し趣を変えて、金融商品取引業者について書いてみます。

金融商品取引業は金商法上、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業に区分されます。

一種、二種とはなんか公務員らいしネーミングです(苦笑)。

金融商品取引業は、PTS業務、適格機関投資家等特例業務を除いては、すべて登録制で統一されています。昔の証券会社は、登録制→認可制→登録制という変遷を経ていますが、金融商品取引法も証券取引法を引き継いで、原則登録制をとっています。

登録制の特徴は、登録拒否事由に該当しなければ原則登録するというものです。そして、登録拒否事由は、まず、金融商品取引業に共通する登録拒否事由を定め、それぞれの業種の登録拒否事由を特則的に定めています(29条の4)。

規制の柔軟化といいますが、立法者の工夫が読み取れます。これと同じような一般的規定→特則的規定という構造は会社法においても見られるものです。

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主要株主

臨時報告書の提出事由として、主要株主の異動があります(開示府令19条2項4号)。

主要株主とは、自己又は他人の名義をもって総株主等の議決権の10%以上の議決権を有している株主をいいます(金商法163条1項)。

この主要株主は会社法上の帳簿閲覧権(会社法433条)を持ち、会社の業務執行に大きな影響力を有するがゆえに、その異動を適時に開示する必要があるとされています。

この主要株主はあくまで会社に対する影響力を背景にするので、実質の株式の所有ベースで考えます。

他方、大量保有報告制度においては、株式の実質所有者でなくとも、次に掲げる者にも保有者として報告義務があります。

①金銭の信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、株券等の発行者の株主とし ての議決権その他の権利を行使することができる権限又は当該議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者であつて、当該発行者の事業活動を支配する目的を有する者

②投資一任契約その他の契約又は法律の規定に基づき、株券等に投資をするのに必要な権限を有する者

そして、大量保有報告書の写しは、大量保有者から発行者に送付されます(金商法27条の27)。

以上のことを前提とすると、困った事態が生じる可能性があります。

すなわち、ある日突然、発行者のもとに①又は②の者から大量保有報告書の写し(10%以上の議決権の取得をした場合に限られる)が送付されてきた場合に、発行者はだれを主要株主の異動として臨時報告書を提出すればよいかという問題です。

①②が特定のファンドから権限を委任されている場合、実際の議決権の取得者は、ファンドの後ろにいる個々の出資者である可能性があります。

本来、実質所有者が出資者である場合には、その出資者も大量保有報告書を提出義務があるのですが、立法管轄の問題や、単純に脱法として大量保有報告書が提出されていない可能性があります。

このとき、発行者としては①②の者に問い合わせて議決権の実質所有者は誰かを確認するしか方法はありませんが、①②の者が出資者の名前を明かすことは期待できないでしょう。

その場合には、発行者としては、出資者からの大量保有報告書が提出されていないことをもって、(1)主要株主はいないと判断して臨時報告書を提出しないか、または、(2)①②の者を主要株主として臨時報告書を提出するか、という対応が考えられます。

(1)であれば臨時報告書の不提出のリスクがありますし、(2)だと虚偽記載のリスクがあります。

(1)(2)はともに刑事罰の対象ですが、刑事罰の観点から考えた場合、発行者として最善の方法を尽くしておれば、故意責任を問われる可能性は低いと考えられます。

ただ、先日の金融商品取引法の改正により、臨時報告書にも課徴金が課されることとなっています(まだ未施行)。課徴金については一般に故意過失は問わないとされていることから、課徴金のリスクは発行者の頭を悩ませる問題となるでしょう。(もっとも、このような場合、当局が課徴金納付命令を出す可能性は低いと思われますが。)

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ストックオプション3

ドヴォルザーク・イン・プラハ ドヴォルザーク・イン・プラハ

アーティスト:小澤征爾 ヨーヨー・マ,シュターデ(フレデリカ・フォン)
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ストックオプションの第3弾。今回は金融商品取引法の開示との関係です。

ストックオプションの付与の対象は会社の役員等であり、役員等は会社の情報を詳しく知りうる立場であるため、情報開示の必要性は基本的に高くありません。

そのため、金融商品取引法はストックオプションの付与を募集としながらも、有価証券届出書の提出を必要とはしていません(金融商品取引法第4条、施令2条の12、開示府令

具体的なストックオプションの付与の対象者は、自社及びその完全子会社の取締役、会計参与、監査役、執行役又は使用人となっています。親会社が外国会社、子会社が外国会社である場合を含みます。

また、新株予約権を行使して株券を取得する場合については、ガイドラインによって有価証券届出書の提出は必要とされていません。なぜならば、新株予約権の発行の際に、有価証券届出書の要否を判断しているので、それに当然続くものと想定される新株予約権行使時の株券の発行については、有価証券届出書の要否を判断する必要がないからです。

以上のような開示規制の回避は、あくまでストックオプションの付与の対象が会社の役員等であることから認められるもので、勧誘の相手方に役員等以外の者が含まれている場合には、ストックオプションによる開示規制の回避は認められないことになっています。

証券六法(平成20年版) 証券六法(平成20年版)

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域外適用3(2)

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アーティスト:Mr.Children
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昨日の続きです。

結論として妥当であるものは以下のものであると思われます。

①大量保有者が日本にいる場合。それが外国の会社ないし法人でも報告書の提出必要。

②外国の会社でも日本の市場で買付けを行い株式を保有した場合には報告書の提出が 必要。

③外国の会社が外国で株式の買付けを行い外国で株式を保有する場合には報告書の 提出は不要。ただし、外国で大量保有制度があるなら、外国で大量保有報告書が提出される。

このような結論は行為の実質化によって導くことができるものと考えられます。

①については、外国の会社であっても日本で保有という行為を行っているので日本法の適用が認められます。

②については、大量保有制度はあくまで保有をベースに考えていますが、その前提としての買付け行為についても行為ととらえることによって説明可能ではないかと思います。また、日本で証券会社を介して株式を買付けた場合には、日本の証券会社に口座をもっている可能性もあり、この場合には日本において株式を保有していると考えられます。

③については、買付けも保有も外国で行われている以上、日本法の適用はないことになるでしょう。ただ、外国で公衆縦覧に供されている大量保有報告書を日本の投資家がみることは可能です。

以上はあくまで試論です。この結論は保守的すぎるとのご指摘もあるかもしれません。ただ、この結論の根底にある考え方は、株式を保有することは悪いことではないという点です。

もっとも、この結論はあくまで大量保有制度においてのものであり、会社の支配権を奪い合う公開買付けの場合には、また別の考慮が必要となるかもしれません。

HOME(通常盤) HOME(通常盤)

アーティスト:Mr.Children
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域外適用3(1)

大量保有制度の域外適用に関する試論です。

結論としては、少なくとも大量保有制度において効果説をとることは難しいのではないかと思われます。

そもそも効果説にいう効果について、何が効果であるかは不明確です。

強いて言うなら、日本の投資家に重要な情報を生じたということが効果であるということができるのかもしれません。しかし、このように解したとしても、不都合が生じるように思います。

例えば、日本及びアメリカで株式を上場しているアメリカの会社について、日本の投資家が日本で株券等の売買を行い株券等を保有した場合には、効果説によると、アメリカの投資家に重要な情報が生じたということを理由に、日本だけではなくアメリカにおいても大量保有報告書の提出が必要となってしまします。この会社が日本、アメリカだけでなくEU、中国・・・と上場している場合には、すべての国において大量保有報告書を提出しなければならなくなるのでしょうか。この結論はあまりにも事務負担が多すぎるように思われます。

これを調整するには、修正効果説による利益衡量という方法もありますが、これはあまり理論的ではありません。

そこで、あくまで属地主義を基礎としながら、それを実質化することによって大量保有の域外適用を画することができないかということを考えています。

国際取引法 第3版補訂版 国際取引法 第3版補訂版

著者:山田 鐐一,佐野 寛
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意見表明報告書・対質問回答報告書2

新しい公開買付制度と大量保有報告制度 新しい公開買付制度と大量保有報告制度

販売元:商事法務
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前回の続き。

①~③の記述は示唆に富むものです。

①について

意見の交換、質問の交換は従来の開示の中では特殊な制度です。開示は提供者が一方的に情報を開示するもので、意見の交換や質問の交換は本来ならば予定されていないものです。これを開示と位置付けていることは面白い点です。

②について

意見の交換等が開示になじまなくとも、これらがを開示制度に導入できるのは、あくまで支配権を巡るものであるからかもしれません。②はこれを示唆しているように思われます。

③について

とはいえ、あくまで開示は開示なので③のように自主的な取り組みにとどめているように思われます。

意見表明報告書・対質問回答報告書どはこのように従来の開示にはない示唆に富んだ制度になっています。

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意見表明報告書・対質問回答報告書1

金商法の開示規制の中で公開買付制度は特殊な地位にあります。

公開買付制度も開示の制度ではある点では共通しているのですが、まずは提供者が有価証券の発行者ではない点で特殊性を有しています。

公開買付けの流れを簡単に概略すると。

①買収者による公開買付開始広告

           ↓

②買収者による公開買付届出書の提出

           ↓

③発行者による意見表明報告書の提出

           ↓

④買収者による対質問報告書の提出

           ↓

⑤買収者による公開買付けの結果の公告・公表

           ↓

⑥買収者による公開買付報告書の提出

           ↓

⑦買収者による公開買付けによる買付け等の通知書の送付

という流れになります。

③④は平成18年改正によってあらたに設けられた制度です。このような買収者と発行者との間の意見交換の制度も通常の開示規制にはない特殊性です。

同制度の改正の契機となった「金融審議会金融分科会第一部会公開買付制度等ワーキング・グループ報告~公開買付制度等のあり方について~」は以下のように述べています。

まず意見表明報告書については、

「公開買付けについて、その対象会社がいかなる意見を有しているかも、株主・投資者が的確な投資判断を行う上で重要な情報である。とりわけ、敵対的公開買付けの場面においては、公開買付者と対象会社との間で主張と反論が株主・投資者に見える形で展開されることにより、株主・投資者の投資判断の的確性をより高めることができるものと考えられる。現行制度上、対象会社による意見表明は任意とされているが、これらの点を踏まえて、対象会社による意見の表明は義務化していくことが適当である

次に、対質問回答報告書については、

公開買付けの対象会社から公開買付者に対して質問する機会が付与されることは、公開買付者と対象会社の意見の対立点等がより鮮明になり、株主・投資者が投資判断を行う上で一層の便宜となることが考えられる。一方で、上場企業等の支配権を巡るやりとりである以上、公開買付者も対象会社も株主・投資者に対して説得的な情報を提供するインセンティブはすでに内在しており、現状でも公開買付者に対する対象会社からの質問は実務上広く行われている。対象会社からの質問について、法令上あまりにも詳細な制度とすることは、かえってその範囲内で公開買付者が回答すれば情報開示は十分との当事者の認識や場合によっては裁判所の判断等につながりかねず、結果として、情報の提供が行われにくくなることも考えられる。これらの点を踏まえ、質問機会の付与に係る法令上の手当てとしては、対象会社による意見表明に際して、公開買付者に対する質問がある場合に、当該意見表明報告書の中で、その点についての言及も行わせるといった最低限の枠組みを示すにとどめ、その余については、基本的に市場における当事者間の自主的な取組みに委ねていくことが適当である。なお、意見表明報告書における質問に対して、公開買付者が行う回答については、公開買付者の回答の有無をも含めて、株主・投資者等による評価の対象となることを踏まえ、理由を付せば回答しないことも選択できることとすべきである。

二つの制度について気づきの点としては、まず①両制度についてはあくまで開示規制として捉えられていること、②支配権を巡るやりとりであることを意識していること、③買収者と対象会社との間のやりとりはあくまで自主的な枠組みにとどめていることです。

詳解公開買付けの実務 詳解公開買付けの実務

著者:清原 健
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域外適用2

域外適用1の続きです。

域外適用について、属地主義を基本としつつも、自国の域外おいて行われたものについても、自国の域内で効果を生じるものについては、自国の公法を適用しようとする立場があります(効果理論)。

アメリカでは効果理論のもと積極的に域外適用を行っていた時期がありました。

このような効果理論を使ったとしても金商法の域外適用を十分に説明できるのか疑問の余地があります。

効果理論は、一定の行為があり一定の効果を生じるような刑法上の犯罪行為や独占禁止法上のカルテル、不公正取引等を説明することにや利用可能であると思います。

しかし、金融商品取引法上の開示規制については効果理論では説明困難です。

たとえば、日本の上場株券を外国で大量保有した場合、結論的には大量保有報告書の提出義務はあるものと考えられますが、これを効果理論で説明することは難しいと思います。

大量保有者はただ日本の上場株券を大量に保有しているだけで、なんらかの効果を日本に及ぼしているわけではありません。

大量保有自体は株券を所有しているというニュートラルなもので、金融商品取引法によってなんらかの効果をもつものとして色づけされているわけではなく、投資者保護の観点から開示が求められているにすぎないのです。

大量保有制度について域外適用を認めるのはまた別の説明理論が必要になるものと思われます。

もっとも、提出義務があるとしてもそれをエンフォースメントできるのかは更に難しい問題があります。

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域外適用1

金融の分野においては、国際化が避けて通れません。そのため、外国の会社が日本で有価証券の取得勧誘を行うことや、日本が外国で有価証券の取得勧誘を行うことも珍しくありません。

それでは、日本の金融商品取引法はどのような場合に適用されるでしょうか。

日本の会社が日本で有価証券を発行し、日本で取得勧誘を行う場合には、金商法の適用があるのは当然です。これは、いわゆる属地主義というわれる考え方です。

また、外国の会社が有価証券を外国で発行し、外国で取得勧誘を行う場合には、当該外国の証券取引規制法が適用になります。このような取得勧誘の相手方の人数は、日本での取得勧誘の人数にはカウントされないものと考えられます。すなわち外国で発行した有価証券の取得勧誘を当該外国で30人に対して行っている場合、その発行者が日本で30人に対して取得勧誘したとしても、金商法上の募集には当たらないものと考えられます。

このような属地主義を越えて、当該国の公法を当該国外に行われた行為に対して適用することを域外適用といいます(松下「国際経済法(3版)317頁)。

私法の場合には国際私法によりどの法が適用されるのかがわかるのですが、金商法のような公法(厳密に公法といえるかは難しい問題ですが、少なくとも公法的要素はある。)においては、その趣旨、目的に照らして、域外適用が行われる場合があるわけです。

日本の金商法においては、このような域外適用の問題が十分に詰められているのかは疑問の余地があります。

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開示と説明責任2

 開示の中心的主体は発行者です。有価証券届出書、有価証券報告書等は発行者がこれを提供するものとされています。

 他方で、発行者が提供しない情報開示もあります。公開買付けの買収者における公開買付届出書、大量保有者による大量報告書の提供は、発行者によってなされるものではありません。

  公開買付届出書等を提出させる趣旨は、公開買付けが市場外で行われ不透明になりやすく、公開買付へは支配権の取得を目的とするために株価に対する影響が大きいことから、投資者へ情報開示させ、また、株主の平等取扱いを保障しようとすることにあるとされます。

  大量保有報告書等の提出は、特定の者が株式を大量に保有すれば、会社の支配関係及び株価に重大な影響を与えることから、投資者の不足の損害を回避させるために情報開示を義務付けるものとされています。

 (近藤・吉原・黒沼「証券取引法入門(新訂2版)214頁、224頁参照)

  なにゆえ、発行者以外の者が情報開示義務を負うのか。これは説明責任とは違うのか。開示されるのが株式等に限定され、また会社の支配権の移動に着目しているのはなぜか。考えてみると面白い論点です。

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開示と説明責任1

金融商品取引法と会社法は所管省庁が違いうことから、完全な形では統一性がとられているわけではありません。たとえば、会社法上の会計監査人と金商法上の監査証明を行う公認会計士等との間には、制度的なリンクはありません。

 ある法律とある法律が密接な関係にあるものの所管省庁がことなることから、その整合性をどのように考えるか。こういった点は多いに興味をそそられる論点となります。

 最近このような論点について考えているのは、開示と取締役の説明責任との関係です。

 なぜ金商法上、開示制度が設けられているかというと、発行者に有価証券の価値に関する情報を開示させることにより、①市場の価格決定機能を通じて効率的な資源配分を達成するため、②投資者の保護に資するためと考えられます。

 ①の機能は金商法特有のものであるのかもしれませんが、②については、会社法上の取締役の説明責任と交錯することとなります。

 取締役には会社法上、株主に対する説明責任があるものと考えられます。

 まず、会社法上、株主総会において、取締役等は説明義務を負うことが規定されています(会社法314条)。(もっともこの義務は、一定の要件のもとで解除されることがかのうであり、株主に投資判断資料を得る等の特別の情報開示請求権を付与したものではないとの指摘もあります(江頭「株式会社法(2版)327頁)。)

 これに限らず、取締役は株主に対して受託責任の遂行状況を報告しなければならないとされています(広瀬「財務会計(8版)111頁)。具体的には、取締役は計算書類を株主総会において承認を受けるか又は報告することが必要とされています。

 他方で、金商法上の開示においても、財務情報の開示が最も重要なものとなっています。

 このように考えていくと、情報の開示主体が取締役等であること、内容としては財務情報が中心であることなどの点で、開示と説明責任との間には共通点があるといえます。この両制度の関係をどのように考えるべきでしょうか。難しい問題です。

株式会社法 第2版 株式会社法 第2版

著者:江頭憲治郎
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有価証券2

金融商品取引法上の有価証券に当たるとしても当然に開示制度の適用を受けるわけではありません。開示制度の適用を除外される有価証券が金商法上規定されています。

具体的には第3条に規定されています。

 国債証券
 地方債証券
 金融債及び特殊法人債
 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券
 貸付信託の受益証券
 有価証券投資事業権利等を除く第2条2項によって有価証券とみなされる同項各号に列挙されている 権利
 政府が元本の償還及び利息の支払いについて保証している社債
 日本国の加盟する条約により設立された機関が発行する債券で、その条約により本邦内における募集 又は売出しにつき日本国政府の同意を要することとされているもの

 それぞれ適用除外とされるのは、①②⑦についてはデフォルトリスクが少ないこと、③⑤⑥などは他法令による規律がなされていること、⑥などは流通性が低いことなどが理由とされています。

 なかなか面白いのはデフォルトリスクがないことが適用除外の理由とされているところです。確かに、デフォルトリスクが投資家にとって重要な情報であることは疑いようもありませんが、変動利率の国債などもあることを考えれば、投資家の関心はデフォルトリスクだけではないといえるでしょう。それにもかかわらずデフォルトリスクを基準に日本の金商法は開示の適用のある有価証券をとらえています。このことはアメリカでも同様です(地方債に相当するものについて争いがあるようですが。)。

 開示制度が投資家にとって重要な情報収集手段である反面、発行体にとっては負担となります。どこで線引きをするかということは決めの問題として政策判断によるのでしょうが、立法者はデフォルトリスクという切り口でまず線引きをしたことになります。ただ、短期的に有価証券を売買する投資家にとって、デフォルトリスクはどの程度の意味を持つかは疑問のあるところです。

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有価証券

 ディスクロージャー制度が法的に義務付けられ、企業がしぶしぶ応じているというのが現状である以上、いかに法定開示を回避するかが法律家の腕のみせどころとなります。

 そもそも論として、ディスクロージャ制度の提供のある有価証券は限定されています。

 商法上の有価証券の定義は広範で、財産権を表章する紙片であって、その権利の利用が紙片をもってなされることを必要とするものとされています。しかし、金融商品取引法は、その構造として、法の適用のある有価証券は限定しています。具体的には、

 1 国債証券
 2 地方債証券
 3 特別の法律により法人の発行する債券(例えば金融債や社会医療法人債など。)
 4 資産の流動化に関する法律に規定する特定社債券
 5 社債券
 6 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券(日本銀行は発行する出資証券など。)
 7 協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定する優先出資証券(農林中央金庫や商工組合中
   央金庫などが発行する優先出資証券)
 8 資産の流動化に関する法律に規定する優先出資証券又は新優先出資引受権を表示する証券
 9 株券又は新株予約権証券
 10 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券
 11 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券
 12 貸付信託の受益証券
 13 資産の流動化に関する法律に規定する特定目的信託の受益証券
 14 信託法に規定する受益証券発行信託の受益証券
 15 法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形のうち、内閣府令で定めるもの(いわ
   ゆるCP
 16 抵当証券法に規定する抵当証券
 17 外国又は外国の者の発行する証券又は証書で1から9まで又は12から16までに掲げる証券又は証書
   の性質を有するもの
 18 外国の者の発行する証券又は証書で銀行業を営む者その他の金銭の貸付けを業として行う者の貸付
   債権を信託する信託の受益権又はこれに類する権利を表示するもの
 19 オプションを表示する証券又は証書
 20 預託証券又は預託証書
 21 譲渡性預金の預金証書のうち外国法人が発行するもの
22
 学校法人等が行う割当てにより発生する当該学校法人等を債務者とする金銭債権(指名債権でない
   ものに限る。)を表示する証券又は証書であつて、当該学校法人等の名称その他の一定の事項を表
   示するもの

 が金商法第2条第1項に規定されています。この第1項に規定する有価証券を1項有価証券といい、流通性の違いから、次に掲げる2項有価証券とは区別されています。2項有価証券としては、

 1 有価証券に表示される権利のみなし有価証券(例えば、登録国債、登録地債、株券不発行株式、証   券の発行されていない新株予約権など。)
 2 信託の受益証券
 3 外国の者に対する権利で信託の受益証券の性質を有するもの
 4 合名会社若しくは合資会社の社員権(その社員のすべてが株式会社又は合同会社に該当する合名会
   社の社員権、その無限責任社員のすべてが株式会社又は合同会社に該当する合資会社の社員権に限
   る。)又は合同会社の社員権
 5 外国法人の社員権で4の権利の性質を有するもの
 6 集団投資スキーム持分

 が掲げられています。このような法の適用のある有価証券を列挙するのは、開示規制、業規制、不公正な取引の規制を及ぼす必要のある証券を画する趣旨ですが、母法であるアメリカでも連邦証券規則の適用のある証券は同様に規定されています。ただ、アメリカの証券に係る諸権利の具体的な定義規定は置かれていないのに対し、日本での証券の定義は比較的明確です。

 このことは、判例法と制定法との違いや、日本における内閣法制局の存在、はたまた制定時の立法史にも関わりそうな問題でなかなか興味深そうです。例えば、「株券」とか「国債証券」とかは無定義なのに対し、集団投資スキーム持分などは複雑な定義の仕方がなされています。このことは、立案者の趣味によるところもあるかもしれませんが、アメリカ法を輸入した当時の昔は「ざっくり」と、日本において証券取引法が一定の浸透をした今は「詳しく」定義するという歴史的理由があるのかもしれません。

 このような金融商品取引法の有価証券の定義を受けて、さらにディスクロージャー制度の適用のある有価証券が金商法第3条において限定されています。

金融商品取引法入門 第2版 (日経文庫 D 30) Book 金融商品取引法入門 第2版 (日経文庫 D 30)

著者:黒沼 悦郎
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ディスクロージャー

金融商品取引法におけるディスクロージャー制度―企業内容等開示制度・公開買付制度・大量保有報告制度 Book 金融商品取引法におけるディスクロージャー制度―企業内容等開示制度・公開買付制度・大量保有報告制度

販売元:税務研究会
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 「ディスクロージャー」とは日本語で開示するという意味です。開示といっても何に対する開示かというと、このブログでとりあげるのは金融商品取引法における開示です。

 といってもほとんどの方には縁もゆかりもない世界でしょう。

 しかし、上場企業に勤める方々にとっては開示は避けてはとおれない道であります。また、弁護士の中にもこの分野の専門家として活躍なされているかたもいらっしゃいます。そんなマニアの中のマニアに向けたブログとして金融商品取引法における開示制度を考えてみたいというのがこのブログの趣旨です。

 では、そもそもディスクロージャーとは何でしょう。日本語で開示ということばを意味することは先述のとおりです。少し専門的に法律の条文をのぞいてみると、金商法第1条の法律の目的として

「この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。」

 とあります。ディスクロージャーはここにいう「企業内容等の開示の制度」にあたります。すなわち、金商法においてディスクロージャーが重要な地位を占めているのがここから読み取れます。記載の順序が重要性の順序を表すとは必ずしもいえませんが、それでもディスクロージャーが重要であることは確かであると考えられます。

 このようなディスクロージャーの重要性は法律上は自明のことですが、実はディスクロージャー制度の存在意義自体に議論があったりします。日本の証券取引法(金融商品取引法の前身)の母法(参考にして作った法律)はアメリカの1933年証券法(Securities Act of 1933)と1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)ですが、そのアメリカにおいてディスクロージャー制度の必要性が議論されていました。開示制度の不要説は、ポートフォリオによる分散投資が一般的な現在において、法律による強制的な開示(法定開示)は役立たないといいます。これに対して、必要説は、情報の正確性を保証する点に法定開示の存在意義を認めます(黒沼悦郎「アメリカ証券取引法」)(第2版)16頁以下参照)。

 かなりこの辺りは神学論争的なものであり、現実の開示の実態から常にどちらの言い分にも耳を傾ける必要があるのでしょう。ただ、筆者の考えでは、理念的には金融工学等の発展により法定開示の情報の有用性に疑問があることはそのとおりだとしても、それは開示内容を金融庁にアップツーデートしてもらうとして、未だ循環取引など粉飾による投資者被害が絶えない現状においては、法定開示の必要性を認めざるを得ないというものです。

 もっとも、「法律で規制されているから開示する」という論法は必ずしも望ましいものではないと考えています。ディスクロージャ-の理想をいえば、各企業が自己の株券や社債などを投資家に購入してもなるために、自主的な開示を行うというものでしょう。その意味で、法定開示不要論の存在意義もまたあるのです。有価証券報告書を読んでいると、企業によってこのことを意識して書かれているのだろうというもありますが、そうでないところもあります。金融庁はベターレギュレーションとして、プリンシパルベースの規制のあり方も検討しているようですが、理想倒れとならない規制側、企業側の努力も必要となってくるのかもしれません。

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名前

解説 金融商品取引法<第3版> 解説 金融商品取引法&lt;第3版&gt;
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名前というのは、人にとって大きな意味をもっています。

名前は、人が自己を表現する出発点となるものです。4月は新入生、新社会人の歓迎会の季節で、自己紹介をする機械、聞く機会がたくさんありますが、まず、なにを言うかというと名前です。名前を名乗らない自己紹介は存在しません。名前がユニークであれば、それだけで自己紹介のネタになるものです。また、名前はその人の独自性を表すものでもあり、誇りの対象ともなっています。何度かお会いした人の名前を間違えることは、大きな犠牲を払います。私など、人の名前を覚えるのが苦手なので、いつも人の名前を呼ぶときはドキドキします。

他方で、名前は、社会的にはその人の同一性を表すものであり、言い方がよいかは分かりませんが、自己と他者とを識別する基準となります。この意味で名前は社会的なものであります。また、同じ名前を何度も使用することにより、名前に信用や評価、評判が付着して大きな価値を呼ぶこともあります。

以上のことは、法人の名前についても当てはまります。
法人における名前のことを「商号」といいます。商号には、先ほど述べたような個人的意味と社会的意味がありますが、法人というのが自然人(法人と対比して人のことをこう呼びます)と比べてより社会的な存在であるため、その商号は自由に付けられるわけではありません。もちろん、個人的な意味から、商号は自由に付けられるのが原則ですが、法人の名前の中には社会的な信用が生じやすいフレーズや法人の種類を表す名称があるため、その使用が制限されているのです。

今回とりあげる金融商品取引所は、取り扱う対象が社会的信用の高いものであるため、種々の制限が法律上あります。

金融商品取引所とは、金融商品取引法80条1項の規定により内閣総理大臣の免許を受けて金融商品取引所の開設をする金融商品会員制法人又は株式会社をいいます。

これは、法律上の定義であるため、意味がわかりにくいものとなっていますが、当座としては東証や大証などの証券取引所をイメージしていただければ良いでしょう(実際は金融商品取引法は金先法なども包括しているため、証券取引所だけには限られませんが)。

まず、金融商品取引所の名称使用については、86条において規制されています。ここでは、金融商品取引所は、その名称または商号のうちに「取引所」という文字を使用しなければならないとされています。この規定により、東京証券取引所はその商号をそのまま維持することができるわけです。
また、金融商品取引所の形態には、金融商品会員制法人と株式会社があります。金融商品会員制法人は、その名称のうちに会員制法人という文字を用いなければならないとされています(88条1項)。そして、株式会社形態のものは、会社法上、株式会社の商号を使用する必要があります(会社法6条2項)。
このように、法人の名前にはその社会的責任に応じた種々の制限があるわけです。

最後に余談ですが、金融商品取引法の法律上の概念は、あまりカッコのよい名前を使用しているとはいえません。たとえば、今回の取り上げた金融商品取引所や、金融商品取引業者など、ちょっと名前としては真面目に使うとすると少しトホホな感じがします。種々の金融商品を包括的に規律するという金融商品取引法からするといたしかたないのでしょうか。

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募集

改正証券取引法・金融商品取引法のポイント 改正証券取引法・金融商品取引法のポイント

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 金融商品取引法において、最もといって良いほど重要な概念として、『募集』というものがあります。この概念は、有価証券届出書という書類の提出を必要とするかどうかに係るものです。実際に手にはいる有価証券届出書は参照方式や発行登録制度を利用したものであり、簡略なものとなっていますが、完全方式の有価証券届出書(例えば、開示府令第2号様式)は他の提出書類の基本となるものであることから、もっとも詳しいものとなっています。

 少し専門的な用語が多くなってしまいましたが、有価証券の募集・売出しというものに該当してしまうと、面倒くさい書類を提出し、情報を投資家に開示する必要が生じるわけです。もし、提出しなければ、各種の責任が問われることになります(197条の2等)。

 では、『募集』とはどのような概念でしょう。

 金融商品取引法上の募集は、日常用語の募集とは異なりますが、有価証券の購入をしてくれる人を募るという点では、共通性があります。ただ、金融商品取引法上の募集は、募る相手方の性質、人数等が含まれた概念となっています。すなわち、募集とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘のうち、

  ①多数の者を相手方として行う場合
  ②次の(ⅰ)(ⅱ)に該当しない場合
   (ⅰ)適格機関投資家のみを相手方として行う場合であって、有価証券の取得者から適格機関投資      家以外も者に譲渡されるおそれが少ない場合
   (ⅱ)有価証券がその取得者から多数の者に譲渡されるおそれが少ない場合

 を言うものとされています(2条3項。ただし、便宜上、2項有価証券を除いています)。

 適格機関投資家というのは、いわゆるプロの投資家で、有価証券届出書による開示を行わなくとも投資者の保護に反することにはならない者です。具体的には証券会社や保険会社などをイメージしてください(詳しくは定義府令。もっとも、先日の金融商品取引法の政府令案のパブコメによると、適格機関投資家の範囲が大きく変わる可能性があることに注意。)。

 以上が法律上の定義ですが、これだけで募集の概念が完結するわけではありません。次に、政令、府令を読む必要があります。
 
 まず、①多数の者とは50名以上の者を言います(政令案では1条の5。改正前の適格機関投資家を除く人数計算の部分はなくなり、代わりに適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ない場合であることが適格機関投資家を人数制限から除外するための要件となっている)。

 また、(ⅰ)については、政令案1条の4がその具体的な要件を定めています。
(ⅱ)については、有価証券の発行される日以前6ヶ月以内に、その有価証券と同一種類の有価証券が発行されており、両者の取得勧誘を行う人数の合計額が50人以上となる場合以外の場合であって、多人数の者に譲渡されるおそれがないための要件として、政令案1条の7の要件を満たすことが必要です。

 さらに、細かな事項は定義府令案に定められています(定義府令案11条、12条、13条)。

 このような、法律→政令→府令という委任の重層構造(?)上に『募集』という概念がなりたっています。このような重層構造は金融商品取引法上では珍しくなく、このため同法は難解な法律としての地位を不動なものとしているわけです。

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課徴金1

最近、政治ものの本にはまっています。政治ものといっても、イデオロギッシュなものではなく、また、政治家の書いたものでもない、評論家の書いたものを読んでいます。今、読んでいる本は、浅川博忠著「自民党幹事長~三百億のカネ、八百のポストを握る男」というものです。内容は、自民党幹事長とはいかなる仕事をする男であるかを、田中、福田、安部、武部など有名(?)幹事長を引き合いに出して、描き出しているものです。同時に、「政官要覧(政治家のプロフィールや派閥などが記載されている本)」を手元において読むと、野球名鑑を片手に野球を見るようで楽しめます(笑)。
 さて、同著を読んでいると、一般に広く適用される法律というものが、比較的少人数の限られた人々によって作られているのかがわかります。衆議院、参議院を合わせても700人弱しかいない国会議員が法律を作っているのですから、当然といえば当然。代表者を選ぶ選挙の重要性を感じますね。
 同著を読むときの注意点は一点。表紙を隠すカバーをして読むことです。題名と表紙のデザインが強烈なせいか、飲食店で読みながら食べていると、店員に怪訝な顔をされます(笑)・・・・・これは冗談です(苦笑)。

 そんな議員さんが議員修正で作った法律の中に、証券取引法の課徴金制度(継続開示の部分)があります。今回はこの課徴金について検討してみたいと思います。

 課徴金に関する規定は、172条以下となっています。その構成は、第一節(172条~177条)までが納付命令の実体的要件や検査権限を定めており、第二節(178条~185条の17)が審判手続を、第三節(185条の18)が取消訴訟の出訴期間を、第四節(185条の19~185条の21)が雑則を定めています。その他、証券取引等監視委員会や審判官については金融庁設置法が、また審判手続の細則については政令がこれを定めています。

 このような証券取引法の課徴金の制度は、独占禁止法の課徴金制度を参考に作られており、構造として納付命令の前に審判手続を行う事前審判型の手続がとられています。もっとも、元祖課徴金制度を定める独占禁止法については、平成17年の改正により、事後審判型に統一変更されることになりました。ただ、この事後審判型については批判も存在しています。

 課徴金を考えるうえで、従来避けては通れなかった論点として、刑罰と課徴金との二重処罰(憲39条)の問題があります。憲法39条は、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」とされています。そこで、刑事罰が科される行為に対して、さらに課徴金を課すことは、憲法39条に違反するのではないかが問題となるのです。
最新の独占禁止法の体系書である「独占禁止法」・白石忠志・437頁によると、二重処罰の問題は、以下のような経緯によって展開されてきました。

昭和33年最高裁大法廷判決
法人税法上の追徴税と刑罰との同居が問題となった事件で、①違反があれば原則として必ず課され、②違反行為の抑止を目的としている、との二要件を満たせば、行政上の措置として二重処罰の問題は生じないものとされた。

(2)不当利得剥奪論
(1)の二要件に加え、不当利得の剥奪を要件とする必要が説かれた。

不当利得剥奪論の放棄
佐伯仁志「二重処罰の禁止について」を景気として、不当利得剥奪論の放棄へ。また、平成17年改正による不当利得剥奪の説明の放棄。また、平成17年最高裁判決による不当利得額と課徴金納付命令額の不一致の許容。

 上の記述を読んでも、なんのことか意味がわからないと思うので、詳細は白石先生の本を読んでいただくとして、ざっくりいうと以下のような説明となります。

 二重処罰の禁止に反しないとするためには、刑罰と課徴金が異なるものであることを説明する必要→課徴金は、不当利得の剥奪を目的とするもので、刑罰とは異なると説明→しかし、この説明では、利得額の二倍賠償や課徴金減免制度を導入するには不都合→不当利得剥奪論の放棄

 という流れであると思います。この点に関する私見を申せば、課徴金制度の説明のなかに、不当利得剥奪論を持ち込むことは不要と考えています。

不当利得剥奪論は、二重処罰の問題をクリアーするための説明理論としての側面が強く、行政措置と刑罰との区別の規制事実が積み重ねられてきた現在においては、その役割の大半は果たしたのではないでしょうか。また、不当利得の剥奪という目的は究極の目的ではなく、不当利得を剥奪することによって、カルテルのやり得を防ぎ、違反行為の抑止を図れることにあります。とすれば、不当利得剥奪論の究極の目的も違反行為の抑止にあるといえます。さらにいえば、不当利得剥奪論に固守するあまり、行政措置における適正手続いかんが問題となっている現状の議論を妨げることは、本末転倒との感があります。
以上からすれば、不当利得は、課徴金の本質を示すものではなく、課徴金算定の算定基準の一つであると考えることが妥当ではないでしょうか。

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相場操縦2

証券取引法の定評ある教科書として、「証券取引法読本」・河本・大武があります。この教科書の初版は薄いもので、読本との呼び方にしっくりくるものでした。しかし、7版を数えるまでになった現在では、500頁をこえる大部となっており、体系書的色彩が強いものとなっています。その記述は、もとが読本であるためか、難解で、初心者向けのものとはいいにくいものとなっています。もっとも、証券取引の裏側まで及んだ記述や、つっこんだ分析がなされている点で、大変示唆にとんだものとなっています。「証券取引法入門」近藤・吉原・黒沼(残念ながら、絶版)や、「金融所品取引法」・黒沼などのよって、証券取引法の体系をつかんでから、「証券取引法読本」にとりかかるのが効率のよい読み方であるものと思われます。

そんな「証券取引法読本」によると、相場操縦を巡る論点として、159条2項、3項における、①「誘引する目的」と②「当該有価証券の売買取引が繁盛していると誤解させまたはその相場を変動させるべきもの」との関係が挙げられています(同書321条)。
この論点をめぐる議論は、細かい条文が多い証券取引法の中で、法律論らしい法律論なので、今回はこれを取り上げてみようと思います。ちなみに、法律の条文の解釈を巡る議論のある(または、あった)点を論点といいます。

 ①「誘引する目的」と②「当該有価証券の売買取引が繁盛していると誤解させまたはその相場を変動させるべきもの」とは、ともに条文上の相場操縦の要件であるため、両者を具備する必要があることは論を待ちません。ただ、①②のいずれに重点を置くかによって、立証の難易度が変わってきます。一般に、主観的な要件よりも客観的な要件のほうが立証が容易であるとされます。なぜなら、知っているや目的などの主観的要件は、その当事者の供述によって立証する必要が高く、当事者にとって言い逃れることが比較的容易であるからです。この前提知識をもって①②の要件を考えてみましょう。

 両者の関係を考える上で、検討を要するのは、平成4年1月20日の、不公正取引部会における中間報告書と、平成6年7月20日の最高裁判決の考え方です(河本・大武・324頁以下参照)。

(1)中間報告書の考え方
主観的要件
誘引目的は、行為者が自分が売買を行えば他人がそれにつられて売買取引に誘いこまれるかもしれないとの認識があればよい

客観的要件
有価証券市場における相場を支配する意図をもってする、相場が変動する可能性のある取引。具体的な取引態様としては、①寄り付き前から前日の終値より高い指値で買注文をだす、②ザラバの気配をみて、直近の値段より高い指値買いの注文をだしたり、買注文の残りの指値を高く変更する、③時間を追って順次指値を1円刻みに高くした買注文を出す、④比較的高い値段で仮装の売買をする、⑤買指値注文により株価の値下がりをくい止める売買をする、⑥市場の上げにすかさず追随する買付け等を反復継続して行う等の手法が考えられる。その他、市場関与率の状況、1日のうちに最も重要な時間帯である終値付近の関与状況、1日における同一銘柄の反復状況等を総合判断すべきとする。

(2)最高裁判決の考え方
主観的要件
   誘引目的を、人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて有価証券市場における売買取引に誘い込む目的とする。

客観的要件
の目的をもって行う相場を変動させる可能性のある売買取引を相場操縦取引とする。

 中間報告書の考え方は、①の要件の重要性をさげ、さらに②に主観的な意図を読み込む考え方といえます。これに対して、最高裁の考え方は、①の主観的要件を厳密にとらえ、②については重要性を高く考えない見解といえます(「証券取引法入門(新訂第2版)」近藤光男・吉原和志・黒沼悦郎・267頁)。
 ただ、最高裁の見解によっても、主観的要件は、取引の動機、売買の対応、売買に付随した前後の事情、取引の経済的合理性などの状況証拠をもって認定することが可能です。このことからすると、両者の考え方の違いである主観的要件の立証の難易はあまり決定的なものであるとはいいきれないように思われます。どちらかといえば、主観的意図を客観的要件と読める②に読み込む中間報告書の見解は、筋悪であるように思われます。また、刑法における「目的」の用法としても、中間報告書のように、単なる「認識」では足りないように思われます。
 ただ、最高裁の見解においても問題があります。なぜなら、最高裁の見解は、②の要件を厳密には考えず、ほとんど行為類型としての指標を示していないからです。相場操縦は、刑事責任の対象となる以上、罪刑法定主義の趣旨からも、ある程度の行為類型化が必要であると考えられるからです。このことは、157条が、相場操縦の後ろで一般法として控えているとしても、変わることがないでしょう。その意味で、一定の行為類型を挙げた中間報告書は評価されるべきものと考えられます。

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相場操縦1

法律というものは、馴染みのない方には難解で意味不明なものと受け止められがちです。また法律に少し興味があり、これから法律を勉強しようとするかたにも、どのように勉強していいのか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私の経験では、法律の勉強の仕方には、2種類があります。一つは、「総論型」。これは、法律の趣旨から、全体を俯瞰する方法です。ざっと、法律の体系を捉え、趣旨から各制度を整理しようとする勉強法です。この方法の利点は、大きな視点から制度を理解できること、新たな制度の提言など、ダイナミックな議論が可能であるところです。ただ、「総論型」は、ダイナミックであるがゆえ、各論の理解がおざなりになりやすく、精緻な議論ができないことが欠点といえます。

これに対して、第二の方法は、「各論型」です。これは、各論的な細かい制度を正確に理解することを通じて、その積み重ねから法律の全体像を描くという方法です。その最大の利点は、各論を完璧に押さえられるため、議論に安定感があることです。その欠点としては、全体像をつかむのに時間がかかること、ダイナミックな議論に欠けるところでしょうか。

どちらの方法がよいのかは、好みの問題ではありますが、私の感想では、教養として法律を学ぶのであれば、「総論型」がお勧めです。ただ、法律実務家を目指す勉強であれば、あくまで「各論型」を基本に据えるべきであると思います。かのデカルトは、理解困難な事象は、細部に分割すべきとしています。これは、難解な法律というものに挑む場合にもあてはまることではないでしょうか。また、法律実務家は、依頼人を背負う職業であり、ミスは許されません。このことからも、安定感のある「各論型」がお勧めです。

もっとも、法律は、自然現象とは異なり、人間の思考の末に作り上げられたものです。そのため、法律は一定の体系のもとに形作られています。そのため、ざっと「総論型」で体系を押さえたうえで、「各論型」に移行して細部を詰めるというのも、経済的な方法であるかもしれません。

ということで、前回では、証券取引法(金融商品取引法)の体系を押さえました。そこで、今回は、各論にまいります。特に今回とりあげるのは、3本柱の一つである、②不公正な取引の規制、そのなかでも相場操縦です。

相場操縦とは、市場のおける価格形成(相場)を人為的に操作することをいいます(「金融商品取引法入門」・黒沼・135頁)。
株式投資をされている方なら、株価が安いときに買って、高いときに売りたいと常に考えられていることでしょう。しかし、株価は、株式の需要と供給のバランスによって成り立っており、投資家一人の思惑によって変動しないのが通常です。ただ、この株価を人為的に操ることができたならどうでしょう。その投資家にとっては、莫大な利益をもたらすことになるでしょう。これに反して、株価を操作できない投資家にとっては、一部の投資家による株価の操作は、甚大な損害を被りかねない事態です。これら事態は、公正な市場を害するものです。そこで、人為的な株価の操作、すなわち相場操縦が証券取引法(金融所品取引法)159条によって規制されているわけです。

ただ、相場操縦が悪いことであるということは、理解することが容易であるとしても、実際の取引の場面で、相場操縦を見破ること、および立証することは困難であるといわれます。なぜなら、市場にはいつも大量の注文が集まってくるが、それはいろいろな目的をもっており、その需給関係いかんによっては、外見上、不自然な値段の動きをする場合があるからです(「証券取引法読本(7版)」・河本・大武・313頁)。

さて、具体的な条文の話に戻りますと、以下の取引が159条によって規制されています(以下は、前傾黒沼136頁以下を参照しています)。

仮想取引(1項1~3号)
同一人が同一銘柄について同時期に売り注文と買い注文を出すように、有価証券等の権利の移転を目的としない取引

馴れ合い取引(1項4~8号)
複数の者が通謀して仮想取引を行うこと

変動操作(2項1号)
大量の売買注文を市場に出すことによって相場を人為的に変動させる行為

表示による相場操縦(2項2、3号)
相場が自己又は他人の操作によって変動すべき旨を流布する行為、および有価証券の売買等を行うにつき虚偽または誤解を生じるような表示を故意にする行為

安定操作(2項4号)
相場を安定させる目的をもつて一連の売買取引を行うこと(ただし、元引受証券会社が一定のルールに従って対象証券の市場価格を買い支えることは許容されている)

なお、見せ玉(売買が盛んなように見せかけるために架空の注文を出し、約定が成立しそうになると取り消すもの)について、従来は、顧客の委託によるものが刑罰の対象となるだけだったのですが、改正により、顧客の委託によるもの、および証券会社の自己の計算によるものが刑罰と課徴金の対象となることになりました(詳しい条文操作は、「一問一答金融商品取引法」三井・池田・松尾・258頁以下参照)。

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体系

「貯蓄から投資へ」の掛け声のもと、株式投資が盛り上がっています。一時期は、主婦様がデイトレードを行ったり、ジェイコム株で数十億儲けた人があらわれたりと、ニュースに事欠かなかったこの話題ですが、最近では、少し小康状態でしょうか。

 昨今の株式投資ブームをみると、株式市場はあたかもギャンブルの場であるように見えます。たしかに、株式市場は、投資家の資産運用の場であり、この機能は重要なものです。ただ、法律的な側面から見ると、株式市場は、企業の資金調達の場であるとの側面も重要なものです。

 すなわち、企業の資金調達のニーズ→株式市場の資産運用の場としての魅力→投資家の投資という連鎖が株式市場を成り立たせるものといえるのではないでしょうか。

 この一連の連鎖を成立させるためには、法律的な制度整備が必要となってきます。
 まず、企業の資金調達のニーズがある場合、その資金を金融機関からの借り入れに頼るのも手ですが、それ以外に、株式や社債などの有価証券を発行して、多くの投資家から資金を集める方法もあります。そこで、そもそも、市場の商品となる株式や社債の発行が認められなければなりません。もっとも、株式や社債の発行は会社の利害関係人の利害に影響を与えるため、一定の手続きを要します。これらの手続きを定めるのが会社法です。

 次に、商品が出揃ったとしても、それを販売する市場が必要です。この市場は、企業が投資家に有価証券を販売する発行市場と、投資家が有価証券を換金する流通市場とに分析されます。
 この両市場を適切に運営するためには、二つのことが必要とされます。ひとつは、企業や証券の価値が情報に基づいて正しく評価されるということと、市場が投資家にとって信頼され、アクセスが容易であることとされます(「金融商品取引法」・黒沼悦郎・34、35頁)。
この二つの必要性を満たすため、証券取引法(金融商品取引法)が以下の規制を行っています。

ディスクロージャー制度
相場操縦、インサイダー、風説の流布などの不公正取引の禁止
証券取引所、証券会社などの、証券関係機関の規制

 この3本柱によって、証券取引法(金融商品取引法)は成り立っているといえます。

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公開買付制度1

公開買付(TOB take over bid)規制とは、取引所市場外において大量の買付けを行おうとする買付者に対して、買付期間・数量・価格などの開示を義務付けることにより、買収対象会社の株主に対して、公平な売却の機会を確保するための規制です(「新しい金融商品取引法規制について」・金融庁・13頁)。

昨今の企業買収の盛り上がりにより、公開買付(TOB)という言葉は日常化しつつあります。皆様も。王子製紙VS北越製紙や、フジテレビ・ニッポン放送VSライブドア、夢真ホールディングスVS日本技術開発などをめぐって、TOBという言葉を耳にされたことがあるでしょう。

TOB
規制は、取引市場外で10名を越える者から5%の株式を買い付ける場合に公開買付の手続きの履行を義務付け、また、保有割合が3分の1超となる場合には10名以下からの買付であっても公開買付の手続きの履行を義務付けるものです(いわゆる3分の1ルール)。

従前は、TOB規制は、企業再編への妨げとなるものとして、その緩和が検討されたことがありましたが、前述の一連の買収事件をめぐって、公開買付制度の不備が、買付対象企業側からだけでなく、買付者側からも指摘さてきたところです。
そこで、金融商品取引法では、公開買付制度の見直しが行われています(正確には、題名変更に先立って証券取引法の改正として施行される)。おもな見直し点をTOB制度の趣旨である情報の開示、株主の平等の確保およびその他という観点から整理すると、以下のようになります(なお、以下の記載は、「解説金融商品取引法」大崎貞和・102頁を参考にしています)。

(1)情報開示
具体的には、①TOB規制対象を拡大したこと(3分の1ルールは堅持したものの、一定の期間に行われる一連の取引について、取引市場外での取引と、それと同時にまたは引き続いて行われる取引所ないでの取引や第三者割当等による取得とを合計すると保有割合が3分の1を超えるような場合にも、TOBの規制対象とした。改正法27条の2第14号)、②意見表明報告書、対質問回答報告書の見直し(意見表明報告書の内容として、TOBに対する意見のほか、買付者に対する質問や買付期間を政令で定める期間に延長することを請求する旨および理由を記載する(改正法27条の101項)。また、質問された買付者は、政令で定める期間内に当該質問に対する回答そのたの事項を記載した体質門回答報告書を提出する必要がある(改正法同条11項))、③TOBの対象となっている株式を当該株式の発行者以外の者が取得し、その保有割合が3分の1超となるような場合について、TOBの義務付け(改正法27条の215号)があります。

(2)株主の平等の確保
 いわゆる二段階TOB(最初高額の値段によるTOBを仕掛けておき、それに応じない場合の2回目のTOBは、前回よりも低額な値段を提示するもの。株主は、初回のTOBに応じなければ、損をするとの心理的負担を背負うことになる)に対する見直しとして、全部買付義務の部分的な導入(公開買付者は、公開買付期間内における応募株券等の全部について、政令で定める割合を下回る場合で(TOB成立後の保有割合が3分の2を越える場合を予定しているようである)、応募尾株式等の数の合計が買付予定の株券等の数を超えるときはその超える部分の全部または一部の買付等をしないことを条件とした場合をのぞき、全部買付義務を負うものとされている。改正法27条の134項。)があります。

(3)その他、買収防衛策への対応
 ①公開買付の買付価格の引き下げの許容(株式分割等の買収防衛策が発動されたなどの一定の場合です(改正法27条の611項)、②公開買付の撤回の見直し(政令で定める場合に限ってTOBの撤回を可能とする法律の規定を維持しつつも、株式分割、株式の無償割当、新株、新株予約権の発行、重要な資産の売却、買収防衛策の不解除の確実性がある場合などに撤回を認めるようです。)があります。

公開買付(TOB)は、買収対象会社と買付者との間で、鋭い意見の応酬をおこない、これを株主が十分検討したうえで、買付に応じるのか、それとも株式を保有し続けるのかという選択を行う、というように、非常にダイナミズムのある制度です。アメリカの大統領選挙における公開討論のような形で公開買付が機能すれば、より透明性かつ公正性のある市場が形成できるように思われます。そのためには、買付者、買収対象会社のどちらのサイドに立つこともなく、公正な制度設計がなされる必要があり、両サイドに配慮した今回の改正は、一定程度評価されるものと思います。

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名称

平成18年6月7日、金融商品取引法が可決成立しました(正確には、「証券取引法等の一部を改正する法律」)。同法は、平成20年12月1日にかけて、5段階に分かれて施行されることになっています。
金融商品取引法は、証券取引法をベースに、種々の改正を加えた形で構成されるものです。具体的に金融商品取引法は、①投資サービス規制、②開示制度の整備、③取引所の自主規制業務の適正な運営の確保、④罰則の強化からなっています(一問一答金融商品取引法・松尾直彦編著・3頁)。

ところで、なにゆえ、証券取引法から「金融商品」取引法へと名称が変更されたのでしょうか。
その答は、①の投資サービス規制にあります。投資サービス規制の変更として、本法では(ⅰ)規制対象商品の横断化、(ⅱ)業規制の横断化、(ⅲ)投資者の属性や業務類型に応じた規制の柔軟化を行いました。
特に(ⅰ)について、法の適用対象を画する「有価証券」概念を残したものの、集団投資スキーム概念(例えば、村上ファンドなどのファンドを想像すればよいと思います)の整備、対象デリバティブ取引の拡張(スワップ取引やクレジット・デリバティブ取引など)、包括政令指定の要件の緩和(「流通の状況が前項の有価有価証券に準ずるものと認められ」との要件が削除され、単に「同様の経済的性質」とされた)を通じて、大幅に規制対象が拡大されています。このように規制対象が拡大されたことから、「証券」という名称では狭すぎるということになり、拡張の旨を明らかにするため「金融商品」の名称が用いられることになりました。それに伴い、「証券会社」は、「金融商品取引業者」と定義されることになります(より詳しく言うと、現在の証券会社は、みなし登録第一種業者となります。(証取法等改正法附則18条))。

これによって、証券会社の方は、コンパで「俺、○一證券の社員なのさ!!」とは言えず、「俺、○一金融の社員なのさ!!」としか言えなくなります。だいぶイメージが違いますね~(笑)。

 

というのはうそで、金融商品取引法下においても、みなし登録第一種業者は、その商号中に「証券」という文字を用いなければならないとされています(附則251項)。そのため、現行の証券会社は、「証券会社」という名称を引き続き使用できます(なお、「証券」の文字を使用しない商号への変更も可能)。よかったです(笑)。
なお、金融商品取引法における金融商品取引業者の商号規制については、金融商品取引業者でない者が、金融商品取引業者という商号等またはこれと紛らわしい商号等を用いることができないとされています(31条の3)。もっとも、金融商品取引業者は、商号に金融商品取引業者という名称を付すことが強制されているわけではありません。このことは、現行法下で証券会社に「証券」の文字を用いなければならないとされている(証券取引法31条1項)ことと対比して、ユニークな規制となっています(会社法62項も参照)。その理由は、業の範囲の拡大に伴い、広範な業務範囲を表す商号として適切な用語がないこと、金融商品取引法に統合される法律のうち、証券取引法以外には商号規制が存在せず、仮に商号規制をもうけるとすると、多数の業者に名称変更を強いることになることに配慮したものとされています(一問一答・166頁)。

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