銀行法

検査・監督

銀行は、公共性を有する社会の公器です。そのため、銀行の経営は規制緩和の時代にあっても、決して自由奔放を許すわけにはいきません。取り付け騒ぎなどが起こって金融恐慌が引き起こされれば、大変なことになってしまいます。

そこで、金融庁による銀行の監督権限が、銀行法上認められています。

具体的には、以下の通りです(「ファイナンス法大全(上)」・西村総合法律事務所・668頁以下参照)。

報告または資料の提出(24条)
金融庁長官・管轄財務局長は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、銀行(当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者を含む。)に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができるとされています。また、金融庁長官・管轄財務局長は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該銀行の子法人等又は当該銀行から業務の委託を受けた者に対し、当該銀行の業務又は財産の状況に関し参考となるべき報告又は資料の提出を求めることができます。この際、銀行の子法人等又は当該銀行から業務の委託を受けた者は、正当な理由があるときは、報告又は資料の提出を拒むことができます。この具体的手続きは、おそらく、金融庁の監督局が行っています。

立入検査(25条)
 金融庁長官・管轄財務局長は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に銀行(当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者を含む。)の営業所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができます。また、立入り、質問又は検査を行う場合において特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該職員に銀行の子法人等若しくは当該銀行から業務の委託を受けた者の施設に立ち入らせ、銀行に対する質問若しくは検査に必要な事項に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができるとされます。この検査は、銀行からは恐れられているものですが、あくまで任意の手続きであり、また、犯罪捜査のために行使することはできないとされています。この手続きを行うのは、泣く子もだまる、金融庁の検査局です。

業務の停止等(26条)
金融庁長官・監督財務局長は、銀行の業務若しくは財産又は銀行及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該銀行に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該銀行の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその必要の限度において、期限を付して当該銀行の業務の全部若しくは一部の停止を命じ、若しくは当該銀行の財産の供託その他監督上必要な措置を命ずることができます。この手続きを行うのは、金融庁の監督局だと思われます。

免許の取消し等
内閣総理大臣は、銀行が法令、定款若しくは法令に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、当該銀行に対し、その業務の全部若しくは一部の停止若しくは取締役、執行役、会計参与若しくは監査役の解任を命じ、又は免許を取り消すことができるとされています。銀行の免許の取り下げは、銀行にとっては死刑宣告のようなものです。そのため、その権限は、金融長官には委任されておらず、内閣総理大臣の権限とされています。

資産の国内保有
内閣総理大臣は、預金者等の保護その他公益のため必要があると認めるときは、その必要の限度において、政令で定めるところにより、銀行に対し、その資産のうち政令で定めるものを国内において保有することを命ずることができます。

この他にも、銀行持株会社に対する監督権限として、報告または資料の提出(52条の31)、立入検査(52条の32)、改善計画の提出等の求め等(52条の33)、認可の取消し等(52条の34)が定められています。

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業務範囲規制

少し、法律的な話をしますと、銀行とは、内閣総理大臣の免許を受けて銀行業(預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと及び為替取引を行うこと)を営む者をいいます(2条1項、2項)。

 この銀行の行える業務は、固有業務(預金又は定期積金等の受入れ、資金の貸付け又は手形の割引、為替取引、10条1項)、付随業務(10条2項)、他業証券業務(11条)とされており、これら以外の業務(法律により営む業務を除く)を行うことは禁止されています(12条)。その趣旨は、①銀行が他の業務を兼営した場合、他業のために経営の健全性を損ない、ひいては預金者保護の面で問題が生じるおそれがあること及び、②強力な金融力を背景として一般事業に進出した場合、公正な競争が阻害されるおそれがあることとされています(「ファイナンス法大全(上)」西村総合法律事務所・641頁)。

 これに加え、銀行法は、銀行が子会社とできる会社の範囲も限定しています(16条の2)。具体的には、銀行、長期信用銀行、証券専門会社、保険会社等16条の2に列挙されている会社以外の会社を子会社としてはならないとされています。その趣旨は、銀行が一般事業を営む会社を子会社とすると、(a)利益相反取引を惹起したり、(b)一般事業に起因する異種のリスクが銀行に波及することを防止するためであるとされます(前傾「ファイナンス法大全(上)」643頁)。

 この子会社の規制は、趣旨等を聞くと、なんとなくそうなのかなーと思うのですが、よくよく考えてみると、よくわからない規制です。なぜなら、子会社を巡っては、アームズ・レングス・ルールがあるからです(13条の2)。同条は、(ⅰ)銀行と特定関係者(当該銀行の子会社、当該銀行の銀行主要株主、当該銀行を子会社とする銀行持株会社、当該銀行持株会社の子会社(当該銀行を除く。)、当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者その他の当該銀行と政令で定める特殊の関係のある者)との間で行う取引で、その条件が当該銀行の取引の通常の条件に照らして当該銀行に不利益を与えるものとして内閣府令で定める取引、及び(ⅱ)当該特定関係者との間又は当該特定関係者の顧客との間で行う取引又は行為のうち(ⅰ)に掲げるものに準ずる取引又は行為で、当該銀行の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすおそれのあるものとして内閣府令で定める取引又は行為を行ってはならないものとされています(やむを得ない理由がある場合において内閣総理大臣の承認を受けた場合は別)。
 このアームズ・レングス・ルールがあれば、子会社の業務範囲規制は必要ではないのではないかと思われるのです。すなわち、アームズ。レングス・ルールによって、前述の(a(b)の趣旨が満たされているのではないかと考えられるのです。これに加え、銀行の子会社への出資は、株式の形での有限責任であることから、はたして、子会社のリスクが銀行のリスクへと転化するものかは疑問の余地があるでしょう。さらに、公正な競争の阻害に対する対応は、そもそも銀行法の射程ではなく、独占禁止法の範疇の問題となるのです。

 以上を考えると、子会社の業務範囲の規制は、予防的な側面および、銀行の公共性(銀行が変な子会社をもっていると、銀行の社会的信用が害される(4条2項2号参照))を強調する側面があるのではないかと思われます。このことが、規制緩和の進む現代において、必要な考慮であるかは検討されてもよいのではないかなーと思っています(以上はまったくの私見ですことをお断りしておきます)。

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総論

銀行は、私たちの生活にとって必要不可欠なものです。金銭の預け入れはもちろんのこと、給与の振込みや、電気料金・ガス料金の振り込みなどなど、社会人であって、銀行口座を持っていない人はいないでしょう。「貯蓄から投資へ」との流れの中でも、銀行の存在感は薄くはなってもなくなることはありません。文系学生にとっては、いまだ就職希望が多いことでしょう。貸金業法の強化がなされれば、さらに銀行人気があがるかもしれませんね。

このような重要な銀行について、その経営を自由奔放として許してしまうと、国民の生活にとって重大な影響が出てしまいます。その為、銀行については、その活動を規制する法律があります。それが銀行法です。この銀行法は、銀行の重要性にくらべて、60数条(枝条文あり)とボリュームとしては少ないものとなっています。

ただ、この銀行法を読んでみると、結構面白い条文があります。例えば、休日について、法15条は、「銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る」とされており、休日は法律・政令事項となっています。このことは、銀行の公共性からくるものと思われますが、少し考えてみると当然のことです。各銀行が自由に休日を決められるものとしてしまうと、平日と思ってATMでお金を下ろしたのに、休日手数料が取られてしまうことがあって、困ってしまいます(苦笑)。

この他の規制としては、例えば、最低資本金(20億円以上であることが必要)・商号の規制(銀行という文字の使用)、業務範囲の規制(固有業務、付随業務、他業証券業務)、自己資本比率規制、大口信用供与等の禁止、アームズレングスルール等があります。これらの多くが、銀行の健全性確保のための規定です。これらの規定によって、銀行が健全性を維持し、我々国民にお金を貸していただきたいものです。もちろん、「ストップ借りすぎ!」ですが・・・・。

このような規制法は銀行だけではなく、同様なものが証券会社や保険会社についてもあります。証券会社については証券取引法が、保険会社については、保険業法がそれを定めています。各業法はどれも複雑で、これらを駆使できる法律専門家がいれば、その方は、日本にとって貴重な財産なのだろうと思う今日この頃です(ちなみに、3業法を網羅的に記載したものとして、「ファイナンス法大全」・西村総合法律事務所・621頁以下があります)。

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