会計

過年度遡及修正と制度会計

少し涼しくなったかと思えば、また暑い日が戻ってきそうですね。

最近、学生相手のリクルート活動をやっています。相対的に見て、私の学生時代よりも今の学生は真摯で、忘れていた新鮮な気持ちを呼び起こしていただいている今日この頃です。

さて、以前書いた記事の中で過年度遡及修正について述べたものがありました。この話題は、会社法、税法、金商法という制度会計の目的を考える上でも示唆に富んだものとなっています。

一般にいってそれぞれの制度会計の目的は、

①会社法:配当可能利益の算出

②税法 :担税力の測定

③金商法:投資家に対する情報提供

ということになっています。ここで、過年度遡及修正の目的は情報としての比較可能性の担保ですから、③の対応は必須ということになるのでしょう。

他方、①については、会社法の計算書類は、情報の開示のためのものではないという指摘もあるところであり、任意的に過年度事項の総会への提供を認める、会社計算規則161条3項での対応で十分であるとの結論をとることも可能でしょう。

②についても、一度確定した税額を遡って修正させるということは現実的ではありません。

さらに、③についても、すべての開示書類を遡及的に修正させるかは政策判断のありうるところです。

また、③についても、実務的な問題から、一定の限定された書類(たとえば有価証券報告書だけ)や限られた期間(たとえば1年前まで)が対象となる可能性もあります。

このような自体となると、そもそも過年度遡及修正の意義自体が問われてくることもありえます。

このように、それぞれの制度会計の目的の観点からも、過年度遡及修正の問題は大きな問題といえます。

法人税法講義 第3版 (法学叢書 5) Book 法人税法講義 第3版 (法学叢書 5)

著者:岡村 忠生
販売元:成文堂
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

過年度修正と訂正報告書

久々の書き込みです。いつのまにか8月。暑くなりましたね。

さて、最近ASBJにおいて「会計上の変更及び過去の誤謬に関する検討状況の整理」が公表されています。http://www.asb.or.jp/html/documents/summary_issue/retro2/

これは、国際財務報告基準(IFRS)の対応の一環として、会計方針の変更、表示方法の変更及び過去の誤謬があった場合に、過年度の財務諸表に遡及して適用しようとするものです。

すなわち、ある会計年度において会計方針の変更をした場合には(たとえば、棚卸資産の原価配分の方法)、当該会計年度の財務諸表だけでなく、遡れるだけ遡った従前の財務諸表にその会計方針を適用して、修正しようとするものです。

この会計基準が適用になると、金商法上の開示書類も影響を受けることになります。

現行法上では、従来出した有価証券報告書、有価証券届出書等について、訂正報告書を提出する方法があります。

しかし、過去の誤謬であるならいざしらず、正当な理由に基づく会計方針の変更についても、訂正報告書を要求することには、疑問の余地があります。

また、自発的訂正の「重大な事項の変更」に当たるのかも問題でしょう。

この会計基準の適用はまだ先ですが、法改正をして、訂正報告書の趣旨を変更する必要があるのか、それとも現行の建付けをもとに対応するのか、今後の実務への影響も含めて、注目される問題です。

 国際財務報告基準(IFRSs) 2007 2007年1月1日現在の国際会計基準(IASs)及 国際財務報告基準(IFRSs) 2007 2007年1月1日現在の国際会計基準(IASs)及
販売元:TSUTAYA online
TSUTAYA onlineで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

監査法人

NHKで「監査法人」というドラマをやっていますね。

弁護士のドラマは数多いですが、ついに公認会計士のドラマができるとは。世も進んだものです。

私は仕事柄、公認会計士の方とも仕事をすることがあるのですが、あんなにカッコイイ公認会計士さんに会ったことはありません(苦笑)。

監査という行為自体は紀元前のエジプトとかメソポタミア文明にまで遡ることができるとか。

ただ、日本の公認会計士制度が整備されたのは昭和23年、わずか60年程しかありません。それまでは、計理士のみが存在していただけでした(いまでも計理士の方はいらっしゃいます。)。

さらに監査法人制度の導入は時代がくだり、昭和40年代になります。

昨今では、監査法人制度の中に、有限責任形態を認める法改正もなされています(本年4月1日施行)。

少し前の朝日新聞で、新日本監査法人が有限責任監査法人に移行するという記事もみられたところです。

ドラマで出てくる「ジャパン監査法人」というのは「新日本監査法人」のことでしょうか。

ちなみに劇中の「財政監督庁」は「金融庁」のことであると思われます。

改正 公認会計士法―日本の公認会計士監査制度 改正 公認会計士法―日本の公認会計士監査制度

著者:羽藤 秀雄
販売元:同文舘出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

コンバージェンス

コンバージェンスとは日本語で「収斂」のことをいいます。

会計基準のコンバージェンスを何回かとりあげてきました。このコンバージェンスがなぜおこったかということをざっくりというと、EUで域内の上場企業に対してIFRS・IASの採用を2005年から要請しており、2009年にはEUの域外の上場企業についても適用を求めることとしたことが発端となっています(ことの詳細は『平松「国際財務報告論」』)。

すなわち、EUで上場しようとする日本の企業にはIFRSの採用が義務付けられることになったわけです。

これに対して、日本はEUに会計基準の相互承認を働きかけるとともに、日本の会計基準をIFRSに収斂(コンバージェン)することが必要となってきました。

ただ、よくよく考えてみると、EUでいくら上場企業にIFRSの適用を義務付けても、EU自体に上場するメリットが少なければ説得力を持ちません。裏をかえせば、コンバージェンスの必要が高まったのは、それだけEUのマーケットとしての魅力が高いことを意味しています。

このマーケットとしての魅力を武器に、EUは会計基準というディファクトスタンダード戦争に勝利し、また優位な地位を確保したといえるのです。

これに対して日本マーケットの外国会社の上場は年々少なくなってきています。今の日本でEUと同じことがはたしてできるか・・・。

EU市場の魅力の高まりは、アメリカ独り勝ちの時代からの転換を象徴します。そして、EUの後ろには中国、インドなどが控えています。これからの日本の舵取りは会計という分野だけでも難しい局面にあります。

国際会計基準戦争 国際会計基準戦争

著者:磯山 友幸
販売元:日経BP社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

株式の持ち合い

ブルドック事件の最高裁決定を受け、株式の持ち合いが進んでいるとのことです。他方で、行き過ぎた株式の持ち合いに対して警鐘をならす動きも生じてきています。両者の対立は、将来の日本の金融資本市場をどのように考えていくかという深い問題です。

それほど大きなテーマを掘り下げられるほど私自身の勉強が進んでいないので、今回も軽く法律と会計との関係についての小ネタです。

昔の日本企業では株式の持ち合いはある意味当然のごとくなされていました。ということは、現在、株式を持ち合いが進んでいたということは、逆を返せば持ち合いが解消されていたということです。

株式の持ち合いの解消には種々の要因があるでしょうが、その一要因として会計があります。

1999年に金融商品に係る会計基準が制定されました(現在は、金融商品に関する会計基準に引き継がれています。)。金融商品に関する会計基準によると、持合いの株式は「その他有価証券」に分類されます。そして、その他有価証券の評価差額は原則として純資産の部へ直入されます。

このように、その他有価証券を保有することは、その価格変動により純資産の部に予期できない変動を生じる可能性があります。

そして、純資産の部の変動は、株主資本比率や株主資本利益率に影響を与えるため、自己資本比率規制のある金融機関を中心に株式の持ち合いが解消されたわけです(平松「国際財務報告論」53頁参照)。

会計基準の制定が日本の企業の株式の持ち合いを解消し、買収防衛策を巡る最高裁の決定が株式の持ち合いを加速している。

法律や会計のあり方が企業の行動に影響をあたえる興味深い例であると思います。

国際財務報告基準ハンドブック 国際財務報告基準ハンドブック

販売元:中央経済社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (1)

法律と会計

法律のある分野においては、会計は切ってもきれない関係にあります。

ざっくり言えば、会社法、金融商品取引法、法人税法において会計を知らなければ半分その法律を理解していないといっても過言ではないかもしれません。

そんな法律と会計との関係に関する話。

法律の世界では周知のとおり大陸法系と英米法系とに大きくわかれています。大陸法はいわゆる成文法典をもつ国であり、他方で英米法は判例法の国です。

この大陸法系と英米法系との違いが会計のあり方にも影響をあたえているという考え方があります(平松「国際財務報告論」23頁以下参照)。

具体的には大陸法系の諸国では会計の制度は会社法や金融商品取引法などのなかに実体規定としてとりこまれています。また、大陸法系の国では間接金融が中心で、もっぱら会計の目的は債権者保護のための分配可能利益の算定にあり、保守的な「取得原価―実現主義」の考え方をベースとしているとされます。

他方で英米法系の諸国では会計の制度は法制度とは独立したプライベートセクターによって制定されています。そして、英米法系の国では直接金融が中心で、もっぱら会計の目的は投資者への情報提供にあり、「公正価値―発生主義」を基礎とするとされます。

このようにざっくりと法律と会計の世界が分かたれるのかは、疑問の余地もあるでしょうが(例えば、大陸法系の日本でも会計基準の制定は一義的にはASBJによりなされる。)、法律と会計との関係を考える上で面白い視点であると思います。

国際財務報告論―会計基準の収斂と新たな展開 国際財務報告論―会計基準の収斂と新たな展開

販売元:中央経済社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

公認会計士

公認会計士が増えています。昨年の公認会計士試験の合格者は4000人を超えました。

金融商品取引法上、内部統制報告書の提出が義務付けられたため、内部統制対応のために公認会計士は足りない状態になっているとのこと。これに加えて、会計のコンバージェンス、国際財務報告基準への対応など、能力のある公認会計士さんにとっては、いくらでも仕事がある時代になってきています。

ノキ弁なる言葉まで出てきている弁護士さんとはえらい違いです。

さて、以外と知られていないでしょうが、公認会計士さんの仕事には大きく分けて2つあります。

一つは、会社法や金融商品取引法に基づく監査証明を行う監査証明業務。(監査証明業務を定める公認会計士法2条1項をから、1項業務と呼ばれることもあります。)

もう一つは、内部統制のアドバイスや企業のコンサルティングを行う非監査証明業務(非監査証明業務を定める公認会計士法2条2項から、2項業務と呼ばれることもあります。)

公認会計士が公認会計士である所以は、監査証明業務を行うことにあると思われます。しかし、最近では監査証明業務を行わず、コンサルティングに専念する公認会計士さんが出てきているとのこと。噂では、後者の公認会計士の方が収入がいいとか。

イギリスでのバリスタとソリシタとの関係みたいですね。バリスタは法廷に立てる弁護士のことをいい、社会的地位は高いですが、収入は低い。ソリシタは法廷に立てずもっぱら書類の作成をしたりする弁護士のことをいい、社会的地位は低いですが、収入は高い。なんて言われています。

名誉をとるか、お金をとるか。人生における大きな悩みの一つです。

会計監査論 第5版 会計監査論 第5版

著者:山浦 久司
販売元:中央経済社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

会計とファイナンス

 私はべたべたの文系人間なので、数学ができる人にあこがれがあります。金融の分野は総合格闘技なので、法律だけで割り切れるものではありません。当然、会計、英語、数学なども必要なスキルとなります。

 金融をめぐる数学については、ファイナンスという言葉をよく聞きます。これと会計とはどのような関係にあるのでしょうか。最近、おもしろい本を読んだので、ご紹介しましょう。以下は、西山「入門ビジネス・ファイナンス」17頁の記載を参照しています。

 会計とファイナンスとは企業の財務情報に関する分野であることについては共通点があります。ただ、両者には次のような相違点があります。

①立場の違い

 会計は企業の内部にいる経営者・管理者の立場で数字を集計し活用していくのに対して、ファイナンスは資金提供者の立場に立って数字を集計し活用していくものであること。

②変化への対応性

 会計をめぐってはさまざまな歴史やルールがあり、ルールに縛られがちであり、ともすると社会の変化に対応することができないのに対して、ファイナンスの分野はこのような縛りがないこと。

②については、程度問題でもあり、相違点というには若干疑問もありますが、①については面白い分析であると思います。金融をめぐるプレイヤーの多様性を感じますね。

 

入門ビジネス・ファイナンス 入門ビジネス・ファイナンス

著者:西山 茂
販売元:東洋経済新報社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

会計制度

 会計とは、経済主体が営む経済活動およびこれに関連する経済事象を測定・報告する行為をいいます(「財務会計(7版)」・広瀬義洲・2頁)。

 会計は企業の経済活動を表す言語として、法律を学ぶ上でも重要な知識となります。私自身、とても偉い方に、会計の知識は空気と同じだと言われたことがあります。私の現状を示せば、いまだ水中生活が続いているところですが・・・・(苦笑)。

 空気は言い過ぎだとしても、会計の知識は、法律実務家、特にファイナンスやタックスを専門とする法律実務家にとっては必須の知識となっています。
今回は、会計について、特に会社法会計と金融商品取引法会計(証券取引法会計)における監査証明について少し検討してみましょう。

 会社法上、財務書類の会計監査人設置会社においては、計算書類及びその附属明細書について会計監査人の監査証明を受けることが必要とされています(会社法436条2項1号)。そして、会計監査人は公認会計士又は監査法人でなければならないとされています(337条)。つまり、会社法会計においては、会計監査人設置会社は、計算書類及びその附属明細書について公認会計士又は監査法人の監査証明を受けることが必要であることになります。

 他方、金融商品取引法においては、有価証券報告書等の書類について、公認会計士又は監査法人の監査証明が必要とされています(金商法193条の2)。

 以上のように、会社法と金融商品取引法とが両方適用される会社にとっては、会社法上の監査証明と金融商品取引法上の監査証明との2つの監査証明を受けることが必要となってきます。

 もっとも、監査証明は、両者とも公認会計士又は監査法人によるものとされていることがら、実際上は同一の公認会計士又は監査法人の監査証明によって対処されています。

 ただ、ここで留意すべきであるのは、実際上はどうであれ、理論上は、会社法上の監査証明と金融商品取引法上の監査証明とは別の概念であるということです。

 もっと極端に言えば、会社法上の会計監査人による監査証明と金融商品取引法上の公認会計士又は監査法人による監査証明とは無関係であるということです。

 このような事態が発生するには、私見では二つの理由があるものと思われます。

 まず、一つは、会社法と金融商品取引法との所管行政庁が異なることです。もう一つは、会社法会計と金融商品取引法会計との目的がことなるからです。すなわち前者は剰余金の配当規制を主たる目的とし、これに対して後者は投資者保護のためのディスクロージャーをその目的としています。

 以上、検討してきたように両会計における監査証明は、理論上無関係ですが、実際上の法制度は、両者が矛盾するという制度設計にはなっていません。会計上、会社法、証券取引法、税法のトライアングル関係は崩れたのではないかとの指摘もあるようですが、法律の世界ではどのようになるのかが注目です。

財務会計 Book 財務会計

著者:広瀬 義州
販売元:中央経済社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ブラッシュアップ財務会計 第8版 Book ブラッシュアップ財務会計 第8版

著者:広瀬 義州
販売元:中央経済社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)